
沖縄への移住計画を立てるなら、やはり気になるのは支出の大半を占める「家賃」と「生活費」。自分に合った暮らし方を見つけるためにも、まずは「沖縄での生活費」の考え方についてみてみましょう。
沖縄では、「車を持たない暮らし」を選択するのは難しい
移住する上で生活費の負担となるのが、「家賃」です。とはいえ沖縄では、昔から地震が少なく、台風対策のために鉄筋コンクリート造りが多いため、「古いけれど家賃が安い」という物件が結構あります。
ですが、こうした物件ほど、駐車場がありません。
しかも沖縄は、南北に長く広がっているのに、各地域を結ぶ鉄道がありません。さらに、県内のあちこちに米軍基地があり、その合間を縫うように道路や住宅街が広がっているため、路地が狭く、路線バスが入り込めない地域もたくさんあります。
こういった事情もあって、沖縄では、車を持たない暮らしを実現するのがとても難しいです。ですから、移住をするときも、「車を持つ」「車を持たない」のどちらを選択するのか、まずは決める必要があります。
郊外だから家賃が安いとは限らない
一般的なイメージでは、都心部から離れるほど家賃が安くなるイメージがありますが、沖縄では、必ずしもこれが当てはまるとは限りません。むしろ、郊外に行くほど、圧倒的に賃貸物件が少なく、あったとしても、ファミリー向けや駐車場付きの物件となるため、結果として家賃が高くなります。
しかも、車社会の沖縄では、県の中心部である那覇市内の通勤・通学ラッシュによる混雑が毎日起きるため、郊外を避ける傾向が強いです。さらに、基地返還後に新たな住宅地が建設されていくため、今後もこの傾向は加速することが予測されます。
車のある暮らしはガソリン代が生活費に負担をかける
移動手段を車に頼るしかない沖縄では、日中の活動場所が家以外の場所になるほど、生活費の中に交通費であるガソリン代が占める割合が増えていきます。
しかも、1ℓ当たりのレギュラーガソリンの価格を見てみると、車社会であるにもかかわらず、全国で最も価格が高い県のトップ3に常にランクインしているような状態が続いています。
以下の表はレギュラーガソリンの価格を都道府県別ランキングにしたものです(経済産業省 資源エネルギー庁 石油製品価格調査2017年05月15日発表分より抜粋)
順位 | 都道府県 | 価格(消費税込み/1ℓ) |
---|---|---|
1 | 埼玉県 | 127.4円 |
2 | 岡山県 | 127円 |
3 | 徳島県 | 127.7円 |
3 | 徳島県 | 127.7円 |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
45 | 沖縄県 | 139.2円 |
46 | 鹿児島県 | 140.4円 |
47 | 長崎県 | 140.9円 |
バイクや自転車は塩害ですぐにダメになる
車を使わない代替案として考えられるのが、バイクや自転車です。たしかに、交通渋滞が激しい那覇市内では、二輪車の方が交通渋滞に巻き込まれにくいという点もありますが、長距離の移動には全く向きません。
しかも、沖縄の場合は、塩害の影響でアルミ部分の腐食が早く、新車を買ってもすぐにさびてボロボロになってしまいます。
さらに、那覇市内の一部で運行されているモノレールを利用するにしても、駐輪場が整備されていない駅もあり、利用環境としては十分とは言い切れません。
ちなみに、沖縄県民は基本的に自転車に乗りませんから、交通量が多い那覇市内を自転車で移動時は、かなり注意が必要です。
移住するなら、知っておきたいこと
せっかく移住するなら、気に入った場所でずっと暮らしていける家を探したいという気持ちも、わからなくはありません。
ただし、実際に移住した経験がある私からすれば、その考え方に執着している方が、移住に失敗する危険があると思うのです。
車が必要かどうかは、暮らしてみなければわからない
移住していないうちに、車の所有について決めてしまうと、仕事や生活範囲が狭まってしまいます。通勤通学の心配をしなくてもよいのであれば問題ありませんが、それでも、日々の買い物などでは不便を感じることも多くなります。
また、県内にレンタカー会社は多いですが、これも那覇市内に限定していると考えた方が良く、その他のエリアでは、大きなホテルの周辺などでなければ、見つけることが出来ません。
しかも、ほとんどの家庭では車を複数台所有しているため、今人気のカーシェアリングも県内ではほとんど普及していませんから、これらのサービスを利用することはかなり難しいでしょう。
そのため、「職場を決める」または「試しに沖縄で1か月暮らしてみる」でなければ、定住先を決めるのも難しいでしょうし、もっと厳しい言い方をすれば、移住に失敗して沖縄から引き揚げていく可能性もあります。
「気に入らなかったら引っ越そう」位がちょうどいい
もう一つは、やはり文化の違いが大きく関係していきます。たとえば、お風呂に関する問題。
沖縄の物件では、アメリカの影響が強いため、古い物件になるほど、風呂場はシャワーのみしかありません。さらに、風呂桶に入る習慣がなかった沖縄には、スーパー銭湯はもちろんですが、気軽に風呂を楽しむことができる銭湯すらありません。
もちろん、温泉施設も県内に数か所ありますが、いずれも入泉料は1000~2000円の範囲のため、頻繁に利用するにはおすすめできません。
ほかにも、台風によって停電が起きやすい地域だったり、渇水が続くと取水制限がよく起きる地域、軍用地近くでは治安の問題など、さまざまです。
また、文化の違いは、地域住民との交流においても、大きく関係していきます。本土出身者が比較的多く住んでいる那覇市周辺には、地元出身の若い住民や他地域から引っ越してくる人も多いため、近所付き合いのレベルとしては、ドライで都会的です。
ところが、移住者や他地域出身者が少ない地方になると、地域での活動が非常に多くなります。祭りや行事の参加だけでなく、青年団や婦人会の活動などにも積極的にかかわっていかなければ、地域になじむことは難しいでしょう。
特に、横のつながりや血縁関係を重視する沖縄では、観光客として見た沖縄の印象と現実とのギャップが大きく、そこで悩む人も少なくありません。
一度、地域に飛び込むことが出来れば、移住者であっても地元住民と強いつながりを持つことが出来るのですが、そこまでの努力は、飛び込んでいく側が行わなければ何も始まらないのです。
試しに住んでみるなら、那覇市内が一番!
沖縄の暮らしを体験するにしても、沖縄で仕事を見つけるにしても、まずは那覇市内に拠点を構えるのが一番です。しかも沖縄では、移住をきっかけに店を構えて自営で生活をしている人も多く、そこから多くの情報を手に入れることもできます。
古い物件であれば、この地域で2.5~3.5万円で1DK~2K程度の物件はすぐに見つかります。また、ウィークリーマンションも多く、家電付きのウィークリーマンションや、マンスリー契約も可能な物件もあります。
もっと気軽に滞在したいのであれば、那覇市国際通り周辺にあるドミトリータイプの宿泊施設を利用するのもおすすめです。安いものになると、1泊1000円という超破格の場所もありますし、女性専用の施設もあります。
また、レンタサイクルや、宿泊料金にスクーターが付いたタイプのプランなどもありますから、ハローワークや面接会場への移動も比較的問題なく行うことが出来ます。
沖縄への移住は、気負ってはダメ!
今の沖縄は、基地返還によって新たに住宅開発が計画されたり、モノレールの延長工事がすすめられるなど、様々なところで変化が見られます。そのため、観光客だけでなく、他県からの移住者も年々増加しています。
とはいえ、新しさと古さの差が大きい沖縄では、長く住んでいても、わからないことがたくさんあります。ですから、「観光客以上、移住者未満」の気持ちでまずは沖縄を体験してみるのが、移住成功のための第一歩なのです。