
世界遺産にも登録されている沖縄の聖地・斎場御嶽は、沖縄を代表する観光地でもあります。ただし沖縄県民にとって斎場御嶽はまったく違った意味があり、観光目的以外で訪れる人も多いです。そこで地元県民が観光以外の目的で斎場御嶽を訪れる謎と想いに迫ってみます。
斎場御嶽=沖縄スポリチュアルのシンボル
斎場御嶽は「せーふぁーうたき」と呼び、沖縄の女性にとっては非常に格式の高い整地といわれています。
沖縄の古い方言で「せーふぁー(斎場)」とは「最高の」「最高位の」という意味があります。そして「うたき(御嶽)」は琉球神道(沖縄固有の神道)でさまざまな祭祀を行う場所のことです。
全国では「斎場」が祭祀を行う場所という意味があるので、漢字から受けるイメージだと混乱してしまうのですが、古い沖縄の方言読みが漢字の由来にある斎場御嶽は、「せーふぁーうたき」で「最高位の祭祀を行う場所」となります。
そのため沖縄県民にとって斎場御嶽は沖縄スピリチュアルにおける聖地であると同時に、沖縄スピリチュアルのシンボルでもあります。
斎場御嶽は琉球神道の聖地だけどご神体はない
神道というとわかりにくいですが、世俗的に言うと神社が神道の象徴になります。
神社は沖縄県内にもありますし、まつられている神様の種類が多いのも神道の特徴です。
神社でまつられている神様はやおよろず(八百万)の神といわれています。
また古代神道では山、森、巨木、岩、滝のように自然の中にさまざまな神様が宿っているというのが、神社の基本的な考え方です。
これは沖縄の神道でも同じになります。ただし一般的な神社が「神様を祭る場所」であるのに対して、最高位の祭祀場所である斎場御嶽は「神様を祭る場所ではない」というのが大きな違いです。
その証拠に斎場御嶽にはご神体がありません。それでも沖縄では斎場御嶽に足を運び、祭祀を行うのが伝統です。
ここで最大の謎となるのが「いったい何をしているのか?」ですが、これは斎場御嶽が琉球王朝時代から最高位の聖地とされてきた理由が隠されています。
斎場御嶽を訪れる沖縄県民は「神様が祭られている場所に足を運ぶ」ではなく、「沖縄の神様に会いに行く」という目的で訪れます。
もちろん沖縄の神様も八百万の神に負けないくらい尊い存在ですから、会うためには神様を怒らせないよう。しきたりにのっとって呼び出さなければいけません。
さらに位の高い神様に会うためには、高度な特殊能力を持った人の力が必要です。沖縄ではそのような人を「ノロ(現代においては存在しない)」や「ユタ」と呼びます。
ノロは琉球王朝時代における上級クラスの祭司で、沖縄では「かみんちゅ(神人)」とも呼ばれています。
ノロは公的な祭司者なので、わかりやすく言うと「公務員」です。今はそのような職業はありませんから、現状として今の時代にノロはいないということになります。
ノロに次ぐスピリチュアルの上位祭司者が「ユタ」ですが、ユタにも能力によってランク分けがされています。
斎場御嶽で神様を呼び出せるユタはユタ界の最高クラスに位置し、神様を降臨させることができるといわれています。その場所が斎場御嶽なので、斎場御嶽は神道の一種ですがご神体が無いのです。
地元では「斎場御嶽は怖い場所」とも言われている
斎場御嶽に関するイメージを他県から訪れるスピリチュアル系の人や観光客に効くと「沖縄最高のパワースポット」という言葉が返ってきますが、地元・沖縄ではまったく違ったイメージで言われることが多いです。
最も多いのが「斎場御嶽は怖い場所」で、実際にその場所を訪れて体に不調が起こったという話はよく耳にします。
体に不調が起こった体験者にどんなことが起こったのか詳しく聞いてみると、「肩が重くなった」という体験談がかなり多いです。
次いで「胸が苦しくなった」という体験で、「斎場御嶽で写真をとったら光の玉が写り込んだ」という体験談もよく聞きます。
筆者の友人で沖縄のスポリチュアヒーラーにその話の真意を聞いてみると、写真に写る光の玉は神様の姿が写り込んだもので、体に起こる不調は「訪れるだけの霊力を身につけていないから」といいます。
どちらにしても悪い影響がないと言うのですが、霊能力や超能力がまったくない凡人の筆者からすれば、怖いと感じた体験者の意見はごもっともですし、友人のスピリチュアルヒーラーの話も嘘ではないのでしょう。
信じるも信じないも個人の自由ではありますが、いずれにしても古くから大切に受け継がれてきた聖地ですから、軽はずみな行動は避けた方が良いのは間違いなさそうです。
沖縄では「斎場御嶽は神様に呼ばれなければいってはいけない場所」ともいう
琉球王朝時代の歴史や文化を学ぶ上で重要な意味を持つ斎場御嶽は世界遺産に登録されたことによって、今では観光客でも気軽に訪れること合できる場所です。
ただし沖縄県民が観光以外で訪れる場合には、「神様に会う場所」「神様を降臨させる場所」という観光とはまったく違った意味を持っています。
そのため沖縄では「神様に呼ばれた人でなければいってはいけない場所」といわれているのも事実です。
ユタの修業を行っている女性も沖縄県内には未だに数多くいますが、彼女たちも斎場御嶽を訪れるには「神様に呼ばれた時に行く」といいます。
どのように呼ばれるのかはどうやらその資格を持ったユタでなければわからないようですが、少なくとも沖縄出身者であっても斎場御嶽を訪れるには「資格」というものが必要だといいます。
令和の時代になってもそのような言い伝えが未だに守られていることの意味を知るには、琉球王国の歴史や琉球神道について詳しく勉強する必要があるのですが、観光で訪れる場合には「観光のために〇〇(居住地名)から訪れた〇〇(あなたの名前)です。
お邪魔させていただきます」とあいさつをして見学すると、怖い体験をせず気持ちよく見学ができるといいます。
さらに見学が終わった後は「ありがとうございました。おじゃましました」と一言お礼をすることで、沖縄の神様からパワーを授かるそうです。
謎は多いがだからこそ聖地
沖縄県民であれば誰もが知っている斎場御嶽ですが、沖縄スピリチュアルのシンボルとされている斎場御嶽については、「史跡の一部」として考えている県民と「信仰の場所」として考えている県民に二分されています。
どちらの考えが正しい・間違っているではないのですが、謎が多いからこそ惹かれる場所ともいえますし、できる限り史跡として形を残していきたいというのも沖縄県民の想いです。
そのため観光で訪れる場合は、2つある沖縄県民の想いを理解したうえで静かに見学・お参りするのが最も良いのではないでしょうか?