
沖縄の方言は、本島・離島の違いだけでなく、住む地域や性別によっても違いがあります。ですが、「くがに言葉」と呼ばれる島の言葉には、思わずナルホドとうなずいてしまうような、深い意味が隠されています。
くがに言葉ってことば自体も、「くがに言葉」
沖縄の方言は、確かに本土出身者にとっては難解な言葉が多いものです。でも、そんな方言も、「漢字」で表すと、思わず「なるほどね」とうなずいてしまうものも多いのです。
くがに言葉の「くがに」は「黄金」と書く
くがに言葉といってしまうと、「いったい何の言葉なの?」と思うかもしれませんが、くがにを漢字で書くと、「黄金」となります。
ここから想像してみましょう。
たとえば、「大切にしたい島の心 黄金言葉」というキャッチフレーズがあったとします。とりあえず、「大切にしたいのは島の心だよ」ということは、最初のフレーズで想像できますよね?そこで、その後ろにかかる「黄金言葉」の意味をインスピレーションしてみます。
黄金といえば、ゴールドのことですから、それこそ財産です。そう、「黄金=財産」!
要するに、「くがに言葉」とは、「沖縄の財産となる言葉」という意味になります。ここから、先ほどのキャッチフレーズをもう一度考えてみましょう。
すると、「ご先祖様から伝わる大切な言葉を、島の財産としてこれからも大切にしていきましょうね」というニュアンスが伝わってきます。ちょっと面白いですよね?
実際にくがに言葉を見てみよう
それならば、島の財産であるくがに言葉には、一体どんな言葉があるのか、実際に例を挙げてみてみましょう。
「あわり くりしゃん なまぬぴぃとぅとうぅき」
平仮名で読み方を表記すると、何を言っているのかさっぱりわかりませんが、これを漢字で書きなおしてみます。
すると、「苦労 苦しさ 今の一時」となります。
こうなると、グッと奥深い意味を感じるようになります。ようするに、「苦労も辛さも、感じるのはその時だけだよ」という意味になります。たしか、本土でも「若い時の苦労は買ってでもしろ」というのがありますよね?これによく似ているような気がします。
「やーなれー(る) ふかなれー」
私が沖縄にきて、初めてウチナンチュに褒められたときに使ってもらった言葉です。
実際に言われた時は、正直言って、何を言っているのか意味が分からなかったのですが、にこにこしながらオバーが頭をなでてくれた時に言ってくれた言葉なので、とりあえず褒められているというニュアンスだけが伝わってきました。
さてこのくがに言葉ですが、漢字で書くと、「家習る 外習」となります。
漢字で表している内容から、どうも家庭での教育に関することばだということはわかりますよね?その通りです。
このくがに言葉の意味は、「実家でやってきた習慣や行いは、外に出た時に出るものだよ」ということ。つまり、「親の教育が良かったんだね」といって褒められたということです。意味が分かった時、ほんのちょっとだけ、実家が恋しくなったのを思い出しました。
「みーぬいらー くびうーりり」
またしても、難解なくがに言葉の登場です。
これは、漢字で書くと、「実入らー、首折りり」となります。これ、よく似た言葉を本土でも耳にしますよね?
「実る稲田は頭を垂れる」
まさに、この状況です。稲穂も、実が十分につまってくると、重さによって穂先が徐々に垂れ下がってきます。これと同じように、「偉くなる(頭が重たくなる)ほど、首を折る(頭を下げる)ように謙虚な姿勢でいなさい」という意味になります。
島の言葉で聞くと、なんだか全く意味が分からないけれど、実際に漢字を見ながら意味を知ってみると、日本全国、どこにルーツがあっても、日本人は謙虚な心を美徳とする民族なのだなと感じます。
もちろん、もっと長いくがに言葉もあります!
今回紹介したのは、私が移住したばかりの頃に出会って「なるほどな」と素直に感じたくがに言葉です。今は、もう少しだけいろいろなくがに言葉に出会いました。
でも、長い文章になるほど、平仮名を使って読み方を紹介すると、なにがなんだかわからなくなります。
もしも、沖縄の宝であるくがに言葉に興味が出てきたら、ぜひ、島のオジーやオバーに聞いてみてください。人生の達人の言葉には、先人たちのくがに言葉よりも、はるかに奥が深いものもあります!