神秘の力

「ユタ」という肩書でスピリチュアルな活動をする人が、昔から沖縄にはいます。自然の中に神が宿っていると考えてきた沖縄では、神と人とをつなげるというユタの存在に、それぞれが特別な想いを持っています。

ユタっていったい何?

ユタは、神と人とをつなぐ役割を持つといわれています。それだけに、ウチナンチュの間でも、その存在に対して意見が大きく分かれています。

ユタは巫女?

沖縄では、琉球国と呼ばれる以前から、身近な自然を崇拝の対象とする「自然崇拝」が人々の間で行われてきました。これらは、全国的に見たとしても別段変わったことではなく、一般的にはこうした信仰のあり方を、「神道」といっています。

神社では、社内で祈祷や社務を行う神職がいます。この神職を仏教に置き換えると、僧侶にあたります。ちなみに、神職になるためには資格が必要で、それぞれ細かく地位が分かれています。

さて、神社で働く人物といえば、もう一つ気になる人物がいます。それが、「巫女」です。

巫女は、神様に使える女性のことなのですが、神職には当たりません。そのため、心身ともに健康な女性であれば、誰でも巫女になることが出来ます。

しかも、巫女は資格がなくてもなることが出来る為、年末年始には、アルバイトとして臨時に採用することもよくあります。(ただし神社内では、こうした臨時採用の巫女は、「助勤」または「助務」と呼ばれます)

ではここで、沖縄の状況をもう一度考えてみましょう。沖縄にも、神社はあります。そのため、神職だけでなく、巫女もいます。ですが、この中での巫女は、ユタではありません。しかし、神社内では、祈願を行うユタの姿を見ることがあります。これは、あくまでも個人的な祈願であり、神職が行う祈祷や社務とは異なります。

それならば、ユタにはどういった立場があるのでしょうか。

ユタは、それぞれ別の神様とつながっている

自然

神道においても、その他の宗教においても、神様という存在が必ずあります。ですが、宗教によって、神様が1人しかいないものもありますが、複数の神様が存在するものもあります。これが、一神教と多神教の違いです。

一神教といえば、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教が典型といわれています。これらの宗教では、神様は一人しかいませんし、宗教内で神様と考えられている存在意外を神とすることは認められていません。

これに対して、多神教は、特定の神様を最高位として主神とし、この主神を中心に複数の神様がいるという考え方です。ですから、仏教や神道は多神教の代表であり、他にも、ヒンドゥー教や道教なども多神教として分類されています。

ユタは琉球神道のユタ

実は、沖縄で古くから伝わる民間信仰は、「琉球神道」と呼ばれています。琉球神道では、神の言葉を受け取ることが出来る女性として、「ノロ」と「ユタ」がいます。

この2つは、大きな違いがあります。ノロは、「祝女」と書き、部落や村落で公的な祭祀や祈願行事を取り仕切る女神官のことを言います。ノロは、世襲制であり、一族の氏祖に最も近い血縁者の家(にーどぅくる・根所)の出身の女性でなければいけません。

もちろん、王族にもこれは当てはまります。そのため、王の姉妹から選ばれたノロが、「聞得大君(きこえのおおきみ)」と呼ばれ、ノロの頂点として王とともに政治の中心におかれました。

ところが、ユタは世襲ではありません。「かみだーりぃ」という、一種の通過体験をしたことがきっかけで、ユタの道を歩みます。ですから、言いかえれば、誰でもユタになることが出来るというわけです。

ちなみに、ユタには、「ウマリユタ」と「ナライユタ」の2つがあります。

ユタが祈願する神様には2種類ある

ユタ

琉球神道には、多くの神様がいます。ですが、大きく分けると「来訪神」と「守護神」に分かれています。ユタは、この2つの神様のどちらにも祈願をします。

さて、来訪神と守護神の違いですが、分かりやすく言うと、死者の魂である「祖霊=先祖」を守護神といい、それ以外の神様を、すべて来訪神といいます。

守護神は、普段は全島各地の拝所や御嶽にいるといわれていますので、ユタがこのような場所で祈願する場合は、基本的には守護神への祈願ということになります。

守護神は、ニライカナイと呼ばれる海のかなたの地で神になります。ですから、神になるまでは、拝所や御嶽にはいません。守護神となってニライカナイから再び集落に戻ってくると、拝所や御嶽に留まるようになります。

まれに、墓地が御嶽となることがあります。これは、生前に偉大な攻勢を残した人物が神となったことを意味しており、中には、有名なノロの墓が御嶽となっている場所もあります。

先祖が神様だからこそ、ユタの信じる神様はユタの数だけある

琉球神道で考えられている守護神は祖霊であるという点から、ユタが信じる神様の種類が果てしなくあるということがわかるかと思います。ようするに、ユタの数だけ、祖霊である守護神は存在するわけです。

そのため、ユタの場合は、経典となるものが存在せず、実際に「かみだーりぃ」によってユタになるための修業を始めても、これらを導いてくれる先輩ユタから口伝によって学んでいくといわれています。

ユタは、カウンセラーの役割があったから今も残っている

王家の一族から排出されるノロを中心とした琉球神道を徹底するため、各地域や集落で行われてきた地域信仰の象徴であるユタは、幾度となく弾圧されてきました。こうした過去があってもなお、現在に至るまでユタは民間信仰の担い手として存在し続けています。

そこには、民間信仰としての存在だけでなく、カウンセラーとしての役割を果たすユタの存在があったからだと考えられています。

かみだーりぃは、医学では解明できない病らしい

祈り

ユタは、「かみだーりぃ」といって、原因不明の病をかならず経験しています。かみだーりぃとは異なりますが、ユタでなくても、女性は更年期を迎えると、同じような原因不明の症状に悩まされるようになります。

現在では、更年期に起こる様々な諸症状のことを「更年期障害」と呼びますが、医学が未発達だった時代においては、症状の原因が全くわからないために、心身ともに不安定になる人も多かったといわれています。

さらに、更年期を迎える女性には様々な問題が起こります。

夫婦の不仲や不妊、子どもの病気や家族の問題など、家庭を預かる女性にとって様々な悩みや問題が起こります。こうしたことに対して、同じく、医学では解明できないかみだーりぃを経験したユタへ救いを求める女性は多く、一種のカウンセリング効果があったと考えられています。

世の中の流れとともに変化を始めたユタ

独特の文化と祖霊崇拝の歴史が根強い沖縄では、様々な側面を持っているとはいえ、今でも民間信仰の担い手としてユタの存在を認めている部分が多分にあります。

そんなユタ本人も、時代とともに、少しずつ変化が生まれているようです。

祈願を中心とした宗教活動よりも、スピリチュアルカウンセラーとして、医学とは異なるアプローチから心の病に関わっていくユタも誕生し、これまで以上にユタが関与する分野が多様化しています。様々な宗教や価値観を持っている若いウチナンチュが、これからどのような形でユタと関わっていくかによって、今後、沖縄の文化や習慣に変化が生まれることもあるのかもしれません。

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